自由研究

メモ用

なにかありましたらどうぞ。

超個人的男性声優楽曲大賞2020(後編)

続きです。

10. Beautiful Revenger / 鐘ヶ江隼弥(CV:生田鷹司)、鵡川郁(CV:石井孝英)、鴎端慧(CV:佐香智久)、鷲埜瑞人(CV:濱野大輝
『ReFlap Chasing RePlayers'Collection』2020.6.10 ポニーキャニオン
作詞:佐伯公介 作曲・編曲:佐高陵平(Hifumi,Inc.)
イントロからアウトロまで全体を支配するチープなシンセのループが頭に残ります。音圧のでかさやじゃっかん投げっぱなしともとれる終わり方も含めていまどきっぽい。

9. 林檎 / 斉藤壮馬
『my blue vacation』2019.12.18 ソニーミュージック
作詞・作曲:斉藤壮馬 編曲:出羽良彰
呻き声のようなコーラスが微かに入るイントロから始まり、曲全体を貫く不穏さにびびりますが、そのじつよく聴くとリズムはジャズ歌謡ふうでもありとっつきやすさを忘れてはいません。からの、中盤からの怒濤の展開が聴きどころ。

8. HOPE DIAMOND / Growth
『ALIVE 「CARDS」シリーズ2巻 Growth「DIAMOND」』2020.1.24 ムービック
作詞・作曲・編曲:滝沢章
「Re:born」や「Super Nova」の超絶技巧的な路線が、グロースのもともと持っているいなたさや民族音楽的な素地とやっとうまく結実した感じがします。今作でも中近東系の音色は健在ですが、聖歌隊的な部分もあり、全体的な印象はどこか無国籍。そのよけいな感情を排した歌いぶりは叙事詩的ですらあります。いや、ほんとにかっこいい。グロースというユニットが正しく進化していると思えることはうれしいです。

7. 確かにそうだ / 入野自由
『Life is...』2020.11.4 Kiramune
作詞:入野自由、佐伯youthK 作曲・編曲:佐伯youthK
小手先のギミックなし、力強いみゆくんの歌唱に心地よい説得力があります。ポップでありながら土着的な佐伯ユウスケグルーヴとみゆくんの歌唱スタイルの相性のよさもそれに拍車をかける。

6. memento / 斉藤壮馬
『my blue vacation』2019.12.18 ソニーミュージック
作詞・作曲:斉藤壮馬 編曲:Saku
もちろん男性声優楽曲界にもこれまでシンガロング的な試みは多数あれど、ここまでの開放感/解放感を獲得した曲はなかなかないのではないでしょうか? しかも、その曲調に乗る歌詞がメメントモリ、といういい意味での強烈なアンマッチ。

5. Regret / 畠中 祐
HISTORY』2020.8.19 ランティス
作詞:坂井竜二 作曲・編曲:白戸佑輔 (Dream Monster)
衝撃的なまでの悪質さ。わたしが悪質な曲という形容を使うとき、それはナードコア的な曲というのとだいたい同義なのですが、この曲にかんしてはそういうアプローチではない。けれど時と場合によってはトラウマになりそうな悪質さがたしかに全編に横たわっているのです。さながらポエトリーとラテンとノイズとクワイアとオルタナを一気に詰め込んで煮詰めたような、ドラマチックさと紙一重の悪夢にうなされるような悪質さ。最高。

4. AM#DRIVE / 柿原徹也
『Live in ToKyo』2020.11.25 Kiramune
作詞:宮嶋淳子 作曲・編曲:荒幡亮平
ったく、1枚のアルバムからは1曲しか選べないってだれが決めたんだよ? と言いたくなるくらい個人的名盤が多かった今シーズンですが、これも例外ではなく、ダブ的な処理が際立つ「東京」やイントロがDCPRGにしか聞こえない「エンドレスじゃーねー」などどれも捨てがたかった。。が、やっぱりここはいちばん力強くキャッチーなタイトル曲をということで。サビで鳴っているグルーヴィーなベースが味わい深く、自然と身体が動き出します。

3. 深海より / 寺島拓篤
『ASSEMBLE』2020.3.25 ランティス
作詞:寺島拓篤 作曲・編曲:CMJK
正直に言うとここ最近の寺島さんの路線はもったいないなあと感じていたのですが、この曲にかんしてはまさに! こういうものをこそ待っていた! と快哉を叫びたい。チルすぎないチルアウト、とでもいうのか。寺島さんの曲にはめずらしく、トラックもそれに合わせたヴォーカルもたゆたうようなフラットなテンションで進むのが心地よい。

2. デートプランA to Z / √AtoZ
『デートプランA to Z』2020.4.27 フロンティアワークス
作詞:こだまさおり 作曲:Tom-h@ck 編曲:KanadeYUK
このぎりぎり躁状態までたどりつかない、ハッピーハイテンションだけどなぜか一抹のせつなさもある感に、作曲者の名前をみてなるほど納得。おもちゃ箱のようにめまぐるしく移り変わっていく展開と絶妙にドタバタ感あるリズムが2000年代萌えアニメ感あってくせになる。

1. 真昼どきのステラ / 西山宏太朗
『CITY』2020.10.7 ランティス
作詞:ぽん (ORESAMA) 作曲・編曲:三好啓太
ついにここまできたか。という感覚です。そもそもこの勝手ランキングを始めた大きな動機として、女性声優の世界ではいわゆる"楽曲派"的な評価軸がおぼろげながらも機能しており、それが非常に羨ましかったというのがあります。もちろんコンセプト主導の作品は男性声優楽曲界にも存在しましたが、それを適切に語る、というかむしろ男性声優の楽曲自体を語るという試みが当時あまりなされていないように感じていました(これはあくまで私見です)。
このEPはシティポップ的なアプローチで統一されており、誤解を恐れずに言えば非常に"渋谷系"的フィーリングの作品です。男性声優界にこのような穏やかで良質な作品が生まれえたことはなかなかのカルチャーショックでした。この曲は変にあくの強い歌い方をせず、自然体のヴォーカルとそれに丁寧に寄り添うストリングスが美しい。また変な言い方ですが先に作品ありきではなく西山くんだからこそこういう曲たちが生まれたんだろうなと思えるいい意味でキャラクターありきなのが良いのです。


Apple Musicでほぼすべての曲が配信されている(サブスクになくてもStore自体にはある)というこの状況に、あらためて時代は進化したのだと驚くことしきりです。なにをかくそう、この楽曲大賞が復活できたのも家にいながらにしてdigを進めることのできる大サブスク時代の到来がその一因のひとつです。
じつはもうひとつ楽曲大賞をまたやろうと思ったきっかけがあって、それがエイムさんの男性声優dj mixでした。もともと西山くんのミニアルバムがあまりにもよくてなんとなくまたブログ書こうかな?と思ってたのですが、それを後押ししてくれたのが同じく数年ぶりに公開されたエイムさんのmixでした。
www.mixcloud.com
ひさしぶりに大量の男性声優楽曲にふれて思ったのは、なにより時代がどんどん進んできているということです。しょうじき、このランキングを始めた7年前にはここまで芳醇なシーンが生まれているなんて思ってもみませんでした。こんなにもたくさんのいい曲に出会うことができたことに感謝、そして来年もまたたくさんのいい曲にであえますように。